KENWOOD CVCC電源 PWR18-2P 修理してみる

先日ヤフオクでCVCC安定化電源を落札しました。

KENWOODのPWR18-2Pという18V/2Aが2系統ある定電圧/定電流電源です。トラッキング制御もできますが±出力ではなく+出力が2系統なのはちょっと残念です(COMが内部で接続されているので2系統を切り離すことはできません)。

ジャンクでしたが格安だったので思わず入札してしまいました。

商品説明が「ボリュームつまみが欠品しております」「出力1と2の切り替えスイッチが動作いたしません」となっていたので比較的簡単に直せそう、もしくは一部の機能だけでも使えそうという安直な気持ちでした。

届いてみると…

・安いジャンクの割にかなりしっかりとした梱包だった
ずっしりと重かった(ドロッパ式の電源なのでトランスが重いのは当然、むしろ貴重)
出力の切り替えができないんじゃなくて出力が全く出ない(出力の設定自体もできない)

で、まずは取説などをダウンロード、とりあえず電源を入れてスイッチ類を操作し現状を把握、内部の確認などを行います。

外観はちょっとした傷でも目立ってしまいそうなくらい全体的にきれいな商品でした。

一応取説はあったが内部構造まで詳しく書いてある資料は見つけられませんでした。

特に焼損したような跡や匂いはありません。

修理前の状態としてスイッチ類の操作と表示に関しては…

・電源を入れると電圧表示が点滅する
・+18V(1)と+18V(2)の緑のLEDが点滅する
・電圧/電流の設定切り替え出力(1)と出力(2)の切り替えは可能のようだ
・調整つまみで電流の設定値は変更できるが、電圧の設定値は“0.00”の点滅のまま変更できない
・OUTPUTボタンを押すと内部で出力用のリレーが動作する音はする
・メモリーの”1″,”2″,”3″についても電流値は設定できるが電圧値は“0.00”のまま設定できない
・そのほか”TRACKING”や”OUTPUT PROTECT”スイッチなども一応反応している

取説にあった「保存データが破損していると操作できなくなる」旨の記述があったので、「”VARIABLE”を押しながら電源をONですべてクリアされる」をやってみました。

メモリはクリアされたようだが状況は変わらない

うーん、これは結構複雑な症状で直すのは難しいかな…?
マイコンがらみだったらお手上げだし…

まあ、とりあえずカバーを外してみます。

中央に全体のおよそ1/3を占めるくらいのトランスがあります。

後ろ1/3くらいはダイオードブリッジ、平滑コンデンサ、ヒートシンクについたパワートランジスタがあります。出力電圧に応じてトランスのタップを切り変えるリレーもありました。

前1/3くらいは制御基板が何枚もあります。シールド?内にはマイコン基板(HD64180)スイッチやLED基板、マイコン周辺のロジック基板、アナログ制御回路基板などで結構複雑です。

HITACHIのHD64180にROMとRAM、メモリバックアップ用のコンデンサも見えます。

スイッチとLEDなどが載った基板です。この基板は外さないほうがよかったです。スイッチを押すためのボタンがバラバラ外れるし、LEDも足が長くちょっとした拍子に触って折れそうです。

出力リレーが載った基板です。

ロジックとアナログの制御回路が混在した基板です。フォトカプラもいくつか見えます。出力電流検出用の抵抗や制御回路用の±12Vと+5Vを生成する電源も載っていました。

出力端子付近の基板です。直接ターミナルにワイヤが接続されているのではなく基板にいくつかの部品とともにワイヤーが接続されていて、ターミナルのナットで締め付けられて接続されます。

この症状と内部の回路を見てちょっと直せそうな気が薄れてきました。

回路図や設計時の情報、メンテナンス用の情報などが一切ない場合にはとにかくよく観察してわかるところから回路図を起こしてみることではないでしょうか?

制御回路は複雑すぎて追うのにかなり時間がかかりそうだったので、パワー部分だけを追える範囲で追ってみました。

+電源なのに2SAトランジスタを使ってマイナス側を制御しています。個人的にはちょっと気持ち悪い回路です。

さてこの先どうしましょう?

やはりコツコツとじっくり観察するしかないでしょうね…。

おやっ!

基板のパターン面にこんなものが。

どこから?いつ?かはわかりませんが半田くずが付いています。

もしやと思ってこれを取り除き組み立てて電源を入れてみました。

だめでした。症状は変わりません。でも、これによってどこかの部品が破損した可能性があります。

分解したまま慎重に電源を入れていくつかのポイントの電圧を測ってみました。

7805の出力が0.2Vしかありません。LEDやスイッチが反応しているのでマイコン周辺の電源は正常だと思っていたんですが、それとはまた別の電源のようです。

最近は7805なんてほとんど使わないから手持ちがあったかどうか…

以前に秋月で買ったSTのL7805がありました。これに交換してみます。

外したNJM7805と交換して取り付けたL7805です。

電源を入れてみました。ビンゴです!

電圧が設定可能になったし、メモリーにも設定できたし、まだ無負荷の状態ですがテスターで測って設定した通りの電圧が出力されます。

出力電圧を上げていくと11.2Vくらいを超えたあたりでリレーが動作する音がしました。トランスのタップを電圧の高いほうへ切り替えたのでしょう。電圧を下げていくと10.1Vくらいを下回るとまたリレーの動作音がします。トランスのタップを低いほうへ切り替えたのでしょう。

つまみはとりあえず手持ちのものを付けてみましたが操作性がいまいちなので別のものを用意して付け替える予定です。また、フロントパネルに黄色いシールで+12Vと書かれていたものははがしてきれいにふき取っておきました。今後、負荷をかけてのテストもしてみたいと思っています。それにしてもマイコンの電源とは別にもう一つ+5Vの電源があったとは…

追記:

・マイコン用電源+5Vは今回分解した範囲では見えない部分にレギュレータがあるようです

つまり+5V電源はマイコン用とその他ロジック用の2つの回路があるようです。

つまみが届いたので取り替えてみました。

150円くらいで購入してこんな感じになり結構いいです。

出力2のほうはちょっと不安定な場合があります

電源納入後30分くらいの間、何も負荷を接続していないのに瞬間的に0.5Aくらいの表示が出ることがあります。電流制限を0.5A以下にしていると+18V(2)のLED(緑)が時々点滅して制限電流に達したという表示になります。

1時間もすると収まるのでちょっと原因はわかりませんがとりあえずそのまま使うことにしました。

補足:

この電源の型番は「PWR18-2P」です。

PWRの「R」はRemote動作ができる機能を備えています。背面にモジュラージャックがあり、RJ11コネクタの付いたケーブルで親機(マスターとなるもう一つのPWR電源かPCなど)からデータを受けてその設定値で動作します。

型番末尾の「P」はプラス2電源を意味します。2つの出力のマイナス側が内部でCOMに接続されているので2つの異なった(または同じ)プラス電圧を出力します。プラス/マイナス電源として動作させることはできません。

末尾に「P」の付かない型番の電源はプラス/マイナスの2電源として使用できます。

更に追記:

“OUTPUT”ボタンは押すとリレーが動作する音がしますが、単にリレー接点で出力しているだけではなさそうです。数10msの緩やかな立ち上がりになっています。

ちなみにブレッドボード用の電源など安価なレギュレータでよく使われるAMS1117は入力スイッチをONにすると1ms以内で立ち上がります。

パワーオンリセットを使用している回路ではこの”OUTPUT”ボタンではうまく機能しない場合もあるかもしれません。

KENWOOD CVCC電源 PWR18-2P 修理してみる” に対して6件のコメントがあります。

  1. 柊菜緒 より:

    私がハードオフで買ったKENWOOD PAR18-5も同じ症状だったので、調べてみたら7805の出力が1V位しかなくて交換してみたら無事に直りました!
    ここの情報のおかげです。
    ありがとうございました!

  2. higukenn より:

    直ってよかったですね。
    電圧や電流を自由に変更できる実験用電源があるとちょっとした実験に結構重宝します。
    それにスイッチングレギュレータに比べるとノイズが少ないのでその辺の比較にも使えますね。

  3. 添田 一寿 より:

    大変参考になりました!

    私の場合PAR18-5ですが、GNDとマイナス側の連結板が緩んだまま負荷をかけてしまって、OVER LOADランプが点滅し、ボルト設定も出来ずOUTPUTも働きません。(-Sと-を結んでやるとOUTPUTし、電圧の可変もします)
    以前ににも同じことをして、テクシオで修理したら抵抗を取り替えたと明細にありましたが、私には修理できないので、ヤフオクへジャヤンク品で出品しようと思っていますが、何かアドバイズをお願いいたします。

  4. higukenn より:

    こんにちは、PAR18-5はリモートセンシングが付いた電源のようですね。
    基本的な使い方は端子の「+」と「ー」から負荷につないで「S+」と「Sー」はショートバーでそれぞれ「+」と「ー」につなぐか負荷の近くでつなぐ、もしくは「S+」と「Sー」はどこにもつながないで使うようです。
    「S+」と「Sー」はつながなくてもセンシングができるようにおそらく内部に抵抗が入っていると思われます。
    間違えて「S+」と「Sー」から負荷につないで「+」と「ー」はどこにもつながないとこの内部の抵抗が焼けてしまう(もしくはすでに焼けている)のではないかと想像します。
    私の持っているものにはリモートセンシングが付いていないので電源内部のどのあたりに抵抗が付いているのかわかりませんが、使うときは必ず「+」と「-」から負荷につないで「S+」と「S-」はそれぞれ忘れずに「+」と「-」につないでおくという使い方でいいと思います。この接続で電圧の設定などができないようならば分解して修理が必要でしょう。
    …以上、現物を見ていないので想像で書きました。何かありましたらまたコメントしてください。

  5. 匿名 より:

    大変参考になり、ありがとうございました。
    「間違えて「S+」と「Sー」から負荷につないで「+」と「ー」はどこにもつながないと、この内部の抵抗がすでに焼けている」
    以前も同じ状態で、テクシオの修理明細には、抵抗を取替えたとあったので今回もそうですね!

    電源を入れるとOVER LOADランプが点滅し、電圧設定ができませんが、OUTPUTを押した後なら電圧可変できますので。

  6. A より:

    Same problem. 4558 is broken. Check them.

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