Aliexpressで電子工作-27 いまさらAMラジオ(選択編)
巷ではラジオ放送はどんどんFMに移行して数年後にはAM放送も停波が可能になる法律ができるでしょうという声が聞こえてきています。
そんな状況ですがラジオ回路は電子工作の基本ともいえる要素を多く含んでいます。そこで、AMスーパーヘテロダイン式トランジスタラジオキットを購入して組み立ててみたいと思います。
ただ組み立てるのでは面白くないのでいろいろと改良を加えながら行っていきたいと思います。
トランジスタ式のAMスーパーラジオキットはいくつか種類があります。いくつかを比較して表にしてみました。
型番 |
S66E |
HX108-2 |
HX-207 |
ZX2050 |
ZX921 |
Tr | 6 | 7 | 7 | 7 | 8 |
OSC,Cnv | 1Tr | 1Tr | 1Tr | 1Tr | 1Tr |
IF | 1Tr | 2Tr | 2Tr | 2Tr | 2Tr |
AF-Drv | 1Tr | 1Tr | 1Tr | 1Tr | 2Tr |
AF-Out | OTL-SEPP | Bclass-PP | OTL-SEPP | Bclass-PP | Bclass-PP |
電源 | 単三-2本 | 単三-2本 | 単三-2本 | 単三-2本 | 単一-1本 |
特長 | IFが一段しかない | 標準的な回路 | 出力回路がやや不安 | IFがベース接地回路 | 電源が1.5V |
組み立ててその後実用的に使用するのであれば比較的無難な回路になっているHX108-2あたりがいいでしょう。(もしくはラジオキットとして評判のいい2P3というキットがいいかもしれません)
ただ、今回はいろいろいじってみようと思っているので少し不安ではあるけれどネタになりそうなHX-207にしてみました。
キットには一応中国語の組み立て説明と回路図、部品表、部品配置図などが入っていますが型番で検索するとネット上にも回路図などを見つけることができます。
それぞれの特徴を簡単に見てみます。
※ここに揚げたどのラジオも検波にはゲルマニウムダイオードを使っておらず、トランジスタをダイオード接続したものを使っています。したがって7Trを使用したものがいわゆる6石スーパーと同等になります。
【S66E】
S66とかHX-6Bなどという名前になっているものもあるようです。
IFが一段しかないため弱~中電界強度の放送局は受信しづらいかもしれません。またAGCもあまりよく効かないかもしれません。
検波はトランジスタの単純なダイオード接続ではなくベースに入力されたIF出力をエミッタから検波出力として取り出していますがIF段と検波トランジスタのバイアスは検波トランジスタのコレクタから取り出しています(どれほどの効果があるかはわかりません)。ここが他のラジオキットの回路と異なっているところです。検波後はIFの漏れを低減するためにローパスフィルターが入るのが普通ですがコンデンサ1個で済まされています。
AFアンプはSEPP「準」コンプリメンタリ―回路になっています。これは後述しますがちょっと難ありの回路です。
セットになっているスピーカはあまり良くありません。
【HX108-2】
検波用のトランジスタをゲルマニウムダイオードに置き換えると昔からある6石スーパーと同様になるような標準的な回路になっています。
RFとIF段の電源はダイオードを使った簡易的な定電圧回路になっています。
各トランジスタのエミッタにはそれなりにR,Cが入っており歪やAGC特性が多少良くなっていると思われます。
AFアンプも昔の6石スーパーに使われているようなドライバー段と出力段の両方にトランスの入ったB級プッシュプル回路です。出力トランスはST-32のような2巻き線ではなく1巻線のオートトランス風のものが使われています。
イヤホンジャックがなくアンプの出力はスピーカー直結です。
電源表示のLEDもありません。
ここに揚げた中では一番まともな回路になっているような気がします。
【HX-207】
DS05-7Bという名前のものもあるようです。
検波ダイオードがトランジスタのダイオード接続になっているほかは一見して6石スーパーのような感じにも見えますが、ほかにも細かい違いがあります。
上のHX108-2と比べるといろいろなところでコストダウンの跡が見えます。
RF、IF段は定電圧化されていません。電池の電源から簡単なデカップリングを通して電圧が供給されています。
IFの一段目のトランジスタはエミッタに抵抗もコンデンサも入っていません。そのせいで3~5mAと大きめの電流が流れるようです。ほかのラジオと聞き比べてみないとわかりませんがここの電流が大きいと感度はいいのですが消費電流が多くなるしAGCもかかりずらくなるのではないでしょうか?
AFアンプはS66Eと同じくSEPP「準」コンプリメンタリ―回路になっています。
付属のスピーカはロットによって異なるかもしれませんがたいていS66Eと同じような薄っぺらいスピーカが付属しているようです。
【ZX2050】
この中では唯一IFアンプがベース接地回路になっています。
ネット上の製作記事ではゲインがかなり低いようなことが書かれていましたがシミュレータで検証してみたらそれほどではないようでした。エミッタ接地に改造している人もいました。
AFアンプはHX108-2と同じようなドライバートランスと出力トランスの2つを使用したB級プッシュするになっています。
今ではほとんど入手できないようですし、入手出来ても動作するまでにけっこうてこずりそうです。(その分面白いともいえるかもしれませんが…)
【ZX921】
電源が単一電池1本の1.5Vで動作する回路になっています。
1.5VなのでAFアンプのゲインがやや足りないためかドライバー段2Trに出力段2Trの計4Trになっています。
B級プッシュプルの部分はなぜかPNPトランジスタ(ゲルマニウムではなくシリコントランジスタだが)が使われています。
設定をギリギリまで詰めてイヤホン専用でどれだけ低消費電流のラジオができるか改造してみたくなります。
なかなか面白そうですがこれもAliexpressでは見かけなくなりました。
結局今でも何とか入手出来てIF段AF段ともに改造後ゴコロをくすぐられるようなちょっとビミョーな回路構成になっている【HX-207】を選択することにしました。
(このキットは購入してからずっと放置していました。改めてAliexpressを見るとICを使わないトランジスタAMラジオキットの数が激減しています。DSPラジオキットが増えているようです。ICを使ったFMラジオ+3端子ICのAMラジオのような回路構成のキットはなぜか多くありました。教材用か何かの目的で性能はいまいちだけど誰が組み立ててもとりあえず鳴るみたいのがウケるんでしょうか?)
次回は組み立て前の準備などについて書こうと思います。