【怪しい安物】回転数パルスの出ない3ピンファン
3ピンのDCファンがあって羽根は回転するのに回転数パルスの出ないものがありました。
故障かと思って同型のもう一つのものを調べてみたがこちらも同様に回転はするものの回転数パルスが出ません。
これは何かあるなと思い分解してみることにしました。
まず、コネクタからコンタクトピンを抜いてみると早速怪しい状況になっていました。赤(+12V)と黒(Gnd)はきちんと被覆が剥かれて芯線がカシメられているが、黄色(回転数パルス)は被覆が剥かれていなくて被覆の上からカシメられています。
ファンのほうはきれいに分解できないので仕方なくニッパでフレーム部分の一部を切り取ってみました。モーター基板上にはリード用の端子が2つしかなく、黒と黄色のリードはともにGndと思われる端子に半田付けされていました。
回転数パルスを出力しようという気が全くないようです。
ちなみにDCファン(最近はやりのPWM制御ではなく3ピンのもの)はたいてい同じようなモータードライバーを使っていることが多いのでどんなICが使われているのかちょっと探してみます。
いくつかのメーカから出されていて型番も「2XX」のようなものが多くあります。
このファンに使われていたものは「W277」というマーキングがあったのでおそらく「WinsonのWSH277」であると思われます。その他の代表的なメーカにはこのようなものがあり「2XX」の型番のものが何種類もあり「277」の付く型番のICもあります。
コイルを駆動するピンからどんなパルスが出ているか見てみることにしました。10:1プローブを使っている(2V/div)のでピークで40V程度の鋭いパルスが出ていることがわかります(10Vで駆動時)。
このままではPCやほかのデバイスに接続するのは非常に危険です。
ICの端子はオープンコレクタのようなのでダイオードを通した後Vccにプルアップしてやるとそこそこきれいなパルスになると思われます。
10Vで駆動したときの様子です。ダイオードを使っているので”L”レベルが0Vではなく0.7Vくらいになっています。鋭いピークのパルスはなくなり、きれいな方形波になりました。2Phaseなので
1/12.4ms * 60 / 2 ≒ 2400rpm
でしょう。
ダイオードを1本通すだけで回転数パルスを出力できるのにそれすらも省略してしまうという…安物の中華製品のコストダウンはかなり徹底しています(笑)。
せっかく分解・解析したのでダイオードを1本つけておきました(コネクタ側もきちんとコンタクトピンに接続しておきました)。当面使う予定はありませんが機会があったら使ってみることにします。
5月21日追記:
277タイプのモータードライバーのデータシートで、回転数パルスを出力するためのアプリケーション回路が載っているものがありました。
やはりコイル駆動端子から信号を取り出していますが、この例ではトランジスタによって波形整形しているようです。その方がダイオードを使った回路より”L”レベルの電圧がより0Vに近くなるでしょう。
トランジスタやダイオードを使わなくても回転数パルスが出力できるタイプもありました。
211タイプは1番ピンがVccではなくFG(回転数パルス出力)となっています。抵抗でプルアップするだけで回転数パルスが出力されます。IC自体の電源はコイル駆動端子から(コイルがOFFの期間に)ICに供給されるようになっているようです。